「オンナの世界」と聞いて、明るく清々しいイメージしか湧かない人は解脱したか世間知らずのどちらかだろう。
自分はまごうことなき「オンナ」である。戸籍謄本にもしっかり記載されてある。
でも嫌だ。変えてしまいたい。敵だらけなのでしんどい。ストレスの巣窟なのだ。今回はそんなオンナたちの話をしよう。
オンナの味方はオンナ?
以前、アルバイトをしていた会社の話だ。職種は土木・建設系のオフィス。まあまあ中堅どころ。ここはどっぷり「オンナの世界」だった。

自分と同じような子持ち主婦が多く、学校行事や急な遅刻早退にも理解があるので助かる部分も大きかった。しかしある意味それが足かせになるとは思わなかった。
自分はアルバイトとして採用後、庶務課に配属された。男女比率は半々だが、女性はほぼ全員バイトの主婦。しばらくしてB美とC奈の二人と親しくなった。
彼女らは自分より一回り年下だが、子供の学年が近いので顔を合わせると学校関係の話題で盛り上がった。また会社に対する不満もしょっちゅう言い合っていた。
自分「あの総務のツボネ、許さん!」
B美・C奈「峰子さん、それめっちゃわかるー!」

嫌いなオンナの悪口でこっそり盛り上がることもあった。
いわゆるお局様ってどこの会社にも一人は居ると思うが、まさに性格悪い × 外見がアレ × 男には優しい 、という漫画みたいなオンナが総務課に居た。
全員「アレこそオンナの敵!!!」
B美「オキニの男子としゃべる時の笑顔!」
C奈「いやー男からも嫌われとる」
ただしこのお局、仕事は出来た。性格は嫌いだが色々と世話になったこともあるので、自分はそこ「だけ」評価はしている。
お局、独身だが一部上場企業の彼氏が居る、と本人から聞いたことがある。本当かどうかは知らない。
他の二人は「そんなバカな」と露骨にこき下ろすこき下ろす。共通の敵がいる味方と居るのは、本当に楽しかった。この時は…。
オンナの楽園
「庶務課」の仕事は非常に簡単な事務作業・会社の施設整備清掃・大掛かりな雑用のいわゆる便利屋部署。
力仕事は主に男性が担うのに対し、女性は軽作業のみなので主婦にはうってつけ。TVドラマ「ショムニ」に似てなくもない。
他部署は客先中心で動く為、アルバイトでも急な残業とか珍しくなかったが、ここでは正社員が月末に残業する位。そして指示通りに動けばOKなので楽で仕方なかった。
皆も優しく教えてくれたし、採用されて本当に良かった。何よりも主婦が多い環境なので主婦に対して理解がある。自分はツイてる、と思った。この時は。
【 FODプレミアム 】「ショムニ 第1シーズン」1998年( エピソード全13話 )

オンナの分岐点
ある日のことだ。庶務課の同僚・D子が家庭の事情で間もなく退職するので、庶務課長からD子の後を引き継いでほしいと打診があった。
D子は自分とほぼ同年代だが、古参のバイト従業員で課内でも様々な業務を担当していた。
自分は最初断ったが、他に手の空いてる人間が居そうになかったので、渋々引き受けた。
それを聞いたB美とC奈が顔色変えて「何故引き受けたの?今からでも断りなよ!」と詰め寄ってきた。
「峰子さんのことが心配だから!」と言ってくれた。ああ、自分のことを本当に心配してくれてるんだ、と感謝した。この時は。

数日後、結局自分はD子後任を引き受け、B美らとは全く違う業務についた。
D子は元々正社員でIT業務に熟知しており、結構ややこしい作業をしていたようだ。結婚後は出産・育児のため庶務課でパートになったとのこと。
とにかくD子の空いた穴を今いる人間で埋め合わせするしかない。専門的で難易度の高い業務はY田君という30代の正社員が引き継ぎ、自分は簡単な入力作業のみを担当することになった。
この頃からB美・C奈は妙な態度をとりだした。
「出来ない時は無理です、って言って帰った方がいいよ!」一応気にかけてくれてるんだよねと思ってた。この時は。
簡単な業務とは、パソコンに決まったデータを打ち込むだけの入力作業だ。各部署から回ってきた従業員業務内容や購入備品報告とかの就業日報のようなもの。
自分はパソコンは使えるが2ちゃんねるとニコニコ動画に投稿するくらいのスキルしかない。そんな人間によく白羽の矢を立てたなと感心した。

確かに簡単な作業だけど部署によって提出にバラつきが有り、遅々として捗らないことも度々。
そして月末毎にまとめて総務課に報告が決められているので、間に合わせる為に時々残業していた。
残業といってもせいぜい1時間程度だし、残業分も普通にお給料になるので特に不満はなかった。
月末になると自分だけでなく、Y田君他の正社員も残業大会だ。自然と「しんどいよねー」みたいな会話が生まれる。
そんなある日、B美・C奈が曇った顔でこんな事をいいだした。
「残業で遅くまで残ってたら、Y田君と何か有ると思われちゃうよ?峰子さんだってそんな風に言われるとつらいでしょ?」
今日も気にかけてくれてるんだよねと思ってた。この時は。 ん?いやいや。ちょっと待て。二人の気遣い?はわかるんだが…。
庶務課の皆は、自分とY田君がD子の業務を引継いだのを知ってるので、退勤時間にバラつきがあるのは承知しているし、課長も同様だ。
なによりも月末にシワ寄せさせたくないので、ペース配分も毎日考えながらこなしていたが、B美・C奈の目には自分がY田君と一緒に居たくて、好きで残業しているように映ったようだ。

いやいや…。Y田君は30代半ばで自分とは一回りトシが違う。キレイな奥さんと結婚したばかり。まあまあイケメンで話し上手で性格いいからモテる要素はあると思う。
まさか、自分がそんな風に思われるとは…。本当にそんなことを思う人間が居るのか、気になりだしたので課長に相談してみた。
「はあ?誰も何も言ってこないけど?くだらんこと言ってないで、早く次の業務に移ってくれ。」
頼りにならん。自分はどうすりゃいいんだよ、と頭を抱えた。八方塞がりだった。この時は…。
オンナの涙はオンナも弱い

それから徐々にB美・C奈とギクシャクした関係が続く。表立ったケンカこそないが、二人の顔が明らかに違う。そんな中でも通常業務をこなさないといけない。しんどい。
二人の気持ちも考慮して、出来るだけ無駄を省き、急ぎでない入力は翌日へ回したりと工夫はしてみるが、月末はどうしても残業続きになる。
「総務のお局様から急ぐ様に言われてるから」とさり気なく弁明するけど、聞く耳持たぬようだ。
で、ある日のことだ。退勤間際のB美が涙目で訴えてきた。
「わ た し た ち がこんなに心配してるのに、峰子さん全然わかってくれない!」
「わ た し た ち は変な噂をされるY田君と峰子さんが可哀そうだと思ってるの!」
「 わ た し た ち に何か隠してることが有るなら、お願い!言ってほしいの!」
自分、不覚にも固まって真剣に困ってしまった。で、「誰がそんなことを言ってるの?」としか言えなかった。
二人「え…誰って…。」

B美はシクシク泣くし、C奈は渋い表情だ。いやいや。これ、なんの茶番だ?なんか、自分のせいでこうなってんの?はあ?隠してることって何だ?こっちが知りたいくらいだ。
もう面倒くさくなったので「気を遣わせちゃったね。ごめんね。そんな事を誰にも言わせないように、これからは気を付けるから。」とだけ言っておいた。
どうして理解を得られないんだろう。自分、間違ってたのか?そんなにやる事なす事気に食わないのか?もうヤだヤだ。
ヤーーーーだ!付き合えん。
何かが自分とズレている。彼女らとはあれほどの楽しい時間を共有していたのに、と思うとやりきれなかった。
あれ以来二人とは挨拶や仕事の話はしても、プライベートな内容で盛り上がることはなくなった。ある意味これで良かったんだろう。
オンナの陰にオトコあり?

小耳にはさんだ情報によると、上記の「誰か」はどうもY田君らしい。Y田君はB美・C奈と同世代で仲はいい。B美のお気に入りと言っていいだろう。
Y田君は上記の通りモテる性格。B美らと結構きわどい、家庭内のあけすけな話もしている。そんな時B美はこの上なく楽しそうだった。
で、そのお気に入りのY田君が冗談交じりに「俺と峰子さん、もしかして噂されてんのw?」
なんて言ったらしく、ショックを受けたB美は自分に直談判したというわけだ。C奈はC奈でB美の味方だから、肩を持つしかないだろう。
Y田君、性格はいい人なんだが余計な事をポロッと言っちゃうのがなー。それにしても、どこの小学生のケンカかよ、と思うくらいアホらしい。
オンナ VS オンナというよりも…
その後、色々考えてみた。二人視点だと、自分は彼女らにとって目障りで仕方ない存在だったと思う。
D子後任業務を引き受ける前までは、自分は「わ た し た ち」というカテゴリーで間違いなくお仲間だった。
同じような時間に出勤し、同じような作業を行い、同じ時間にぴったり退勤する仲間。わたしたち主婦だし、お互いに理解できるもんね!ズッ友だよ!…

…それなのに峰子さん、わたしたちがお気に入りのY田君とこれ見よがしに仲良くして!ひどい!…っていう論理なのだろうか?
だとしたらストンと腑に落ちた。だから後任の件をあれ程反対したわけだ。
つまり「わ た し た ち」 カテゴリーから飛び出して、Y田君と楽しくやってる人間が気に食わないのだ。
ただのヤキモチとは…。幼い子供ならともかく、成人して家族を持つ女性が、だ。
それにB美・C奈ほどあからさまじゃなくとも、言わないだけで同じことを思う人間も居るかもしれない。女同志は近くなり過ぎない方がいい。
オンナの敵はオンナじゃない。
「わたしたち」 という名の 「オ ン ナ た ち」 だった。
弱き者、汝の名はオンナ…

B美・C奈だってそれぞれの言い分はあるし、言ってる事にも一理は有る。
自分にだって落ち度は無かったともいえない。一人で背負いこまずに誰かの手を借りれば良かったのかな、と今は思う。
結局のところ自分は打たれ弱い。チキン。彼女らの顔を極力見ないで済むように、課長の許可を取って時短勤務にしてもらったが…。
あまりにも精神が疲弊したので、それから程なくして退職した。退職するまでに色々あったが割愛。また機会があったら投稿してみよう。
嫌なオンナもここまで来ると面白い↓↓↓
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