ブログ de ラノベ ~ 恋するイミテーション【前編】イケ男にフラれて未来改変した話 ~

ブログ・ラノベ

信じてもらえないと思いますが…

はるか昔、私のガラケーに松〇潤からショートメールが来たんですよ!

彼、間違えたらしく「ゴメンネ☆テヘ」と紳士的にお詫びされました!

でも。

「せっかくなんで♡」ってメル友になりました!

それからウキウキの日々!ワタシのメル友は(多分)松〇潤!

そして。

「ボクと会員制のトークルームでチャットしよーよ!」ポッ♡

「このトークルーム、ボクみたいな芸能関係やスポーツ選手しか会員になれないから!」キャッ♡

「キミはボクが招待するから、自動的に会員になれるよ!」キャッ♡キャッ♡

「今なら新規会員登録料半額ですむよ!〇マン✕センエン!!!」

って誘われました…よ?

…遠い「おもひで」。

え…?迷惑メール???松〇潤じゃねーの???

せっかくなので、その「おもひで」wをベースにラノベ書いてみました。

主な登場人物

ユウカ : 地方住み。平凡な会社員。複雑な家庭で育つ。男性とのお付合い経験ほぼナシ。

ヒロ君 : 東京在住。ジュエリー会社勤務の営業マン。イケメン。

ひょんな出会い

「ユウカちゃん?…かな?」

涼やかな声で名前を呼ばれた私は振り向いた。

「ヒロ…くん?」

目の前に細身の男性が立っている。

初めて会う男性だ。

うん!カッコイイじゃん!良かった…

待ち合わせ場所のショッピングモールの雑踏。

私達はお互いの存在を認めて、そっと微笑んだ。


今から丁度、一月前のこと。

日曜の朝、寝床でウトウトしていた時だ。

「ん?…着信?」

スマホにショートメールが入ってる。

「なに?また変なヤツ?」

最近この手の詐欺メールが多くてウンザリだ。

“ お荷物をお預かりしております。以下URLまでナントカカントカ ”

“ お客様のアカウント更新をお願い致します。以下URLまで… ”

“ ご注文内容をご確認下さい。以下… ”

こんなのばっかりなので、ショートメールは基本見ないことにしているのだが、この時はちょっと違った。

“ ヒロミです。ごめん!スマホ忘れたから、会社の携帯から電話してる。すぐ連絡して! ”

ヒロミ?自分の知り合いには居ない。

じゃあ、これ誰?

頭の中が???で充満だ。

どう見ても間違えてるよね…この人。

ショートメールは電話番号で送信するので、間違えてもおかしくはない。

自分とは関係ないので放っておいてもいいだろうけど、モヤモヤが止まらない。

このヒロミさんとやら、急ぎかな?

スマホ忘れて困ってるんだろうな…。

私はショートメールの画面をガン見しながら、迷っていた…。


私は結局

“ こちらは080-〇〇〇〇-✕✕✕✕です。お間違えの様です。”

と書いて送信した。

これで、もう私はいいよね?教えてあげたんだから…。

やれる事を果たしたら、モヤモヤは消え、スッキリ。

ところが。

ホッとした途端に、またメールの着信音が鳴る。

慌ててメールを見たら

“ 先程メールを送った者です。間違えたようで失礼致しました。ご連絡下さり助かりました!有難うございます。”

と書かれてあった。

教えてあげて良かった、と素直に嬉しくなった。

やっぱり、困っている人には親切にしないとね!と少しだけ浮かれた気分になる。

さあ起きなきゃ、と着替えていたら、またメールの着信音。

今朝はにぎやかだなあ、今度は何だろう?

またメールの画面を開けてみた。

“ 何度もすみません。さっき間違えた者です。そちら様の番号とは別に、この番号を確認して頂きたいのですが…”

などとお尋ねの電話番号が書いてある。

自分の番号と良く似ているが、末尾の下二桁が逆になっているので自分とは関係ない。

それを事務的に書いてメールした。

このヒロミさん…

会社の普段使わない携帯を借りて送信したので、いろいろテンパっているとの事だ。

すみません!すみません!を繰り返している。

日曜なのに仕事かな?

メールの文章が妙に初々しいので、ドジっ子新入社員かな?

とか、どうでもいいことを想像してしまった。

“ 気にしないで下さいね。こちらは大丈夫ですので。” からの

“ 優しい方に教えてもらって本当に助かりました。”

のラリーを繰り返していたが、もう切り上げたくなったので

“ それでは…お仕事、頑張って下さい。失礼します。”

と送信してスマホを無造作に閉じる。

私は平凡な会社員だ。

せっかくの日曜日は貴重だから、時間がもったいない。

平凡な会社員にとって、休日は何よりも尊く愛おしい。


メール騒動の翌日。

ヒロミという人は、またメールを送ってきた。

“ 昨日間違えてメールしたヒロミです。度々すみません!失礼ですが、そちらは女性の方ですか? ”

最初何を聞かれているのか分からなかった。

そうですけど何か?と返信したら

昨日問い合わせした番号は個人的な連絡先なので、削除して欲しいそうだ。

ふーん、と思った。

私に性別を聞いてきたのも、用心しての事だろう。

またまた“ ありがとう ” と “ どういたしまして ” のラリーとなってしまった。

そんなこんなで…なんとなく砕けたメールへと移行する。

そしたら。

届いたメールにはこう書かれてあった。

 “ 名前を聞いてもイイですか?ボクは… ”

ボク…???

「え?」と、変な声が出た。

メールの人物は、名字が『広海(ヒロミ)』という名の男性♂だった…。

ドジっ子新入社員の正体は、バリバリ営業職のビジネスマンだった

初めての…煌めくトキメキ

それから、あっという間に一月が流れて、今日。

待ち合わせ場所近くのカフェに入って、2人で初めてお茶をした。

「ユウカちゃん、想像よりもカワイイ!どうしよかと思ったよー」

「ヒロ君!!お世辞言い過ぎぃ~」

彼がメールを誤送信してから、

たったの一月で私は恋をしたんだと思う。

一度も会ったことはなかったのに、どうかしている。

そんなこと、私が一番分かっている。

でもね。こうして目の前に居るヒロ君。

なんて愛おしいんだろう。長い睫毛が女の子みたいだ。

「それにしても、最初ボクのこと、女の子だと思ってたなんてw」

「だって…“ ヒロミです ”って書いてあったら、普通女の子って思うけどw」

 ヒロミちゃんは可愛い女の子だと、思いこんでいたんだもん!

私達は、ひたすら笑いころげるしかなかった。

カフェで軽くお茶をした後、2人でモールの中を散歩した。

私が左、ヒロ君が右。

日曜日の午前中とあって、家族連れが多い。

「あっ、ユウカちゃんにも名刺渡しとくよ。」

ヒロ君はポケットからスリムな名刺ケースを取り出し、中から一枚を抜いて、私に渡してくれた。

『ジュエリーセラー&デザイナー / 広海 黎也ヒロミ レイヤ』と書かれてあった。

「ヒロミ・レイヤ…さんってwなんか芸名みたい。」

「いやーwホストみたいってよく言われる…」

ヒロ君は細身のスーツをさらっと着こなし、やや長めの髪がサラサラだから、ホストでも違和感ない。

でも彼の肩書はジュエリーセラー&デザイナー。

勤め先はお洒落な横文字の会社だ。

海外の会社とも取引してて、土日出勤も珍しくないようだ。

「ホントは今日も仕事だったけど…午前中だけならナントカなったんで、ユウカちゃんに会うこと出来て嬉しいんだけど!!」

「私だって嬉しい~。でもヒロ君が私の地元に出張なんて!偶然にしても凄すぎるね!」

メール→LINEに移行して、さらにプライベートなやりとりになった。

家族のこと。仕事のこと。恋人はお互いに募集中。

ヒロ君の会社は東京だけど、月の半分以上は地方へ出張らしい。

私の地元は、東京からは遠い県庁所在地。

どちらかというと田舎の部類だ。

だから、実際に会えるなんて夢にも思わなかった。

ヒロ君は午後から駅近くのホテルで、ジュエリー展示会イベントの仕事だそうだ。

そんな忙しい時間の合間を縫って、私に会いに来てくれた。

それだけで胸がいっぱいになった。

「今回の展示会はちょっと特別なんだ…ユウカちゃんに、どうしても伝えたいことがあって…。」

「?」

「ボクの肩書、デザイナーでもあるんだけどね、今回、初めて自分がデザインしたジュエリーが…商品化されたんだ…。」

「そうなんだ!それって凄くない?」

「自分のデザインしたジュエリーをお客様に喜んで買って頂く…ずっとずっと夢だったんだ。それが今回…。」

ヒロ君の目が少し遠くなる。

端正な顔立ちなだけに、そんな表情が似合って仕方がない。

「で、ユウカちゃんにお願いがあって…」

「私に出来ること?」

「もし、午後から他に予定がなかったら、展示会見に来て欲しいなって、思うけど…。」

「でも、私なんかが、お仕事場にお邪魔しちゃダメでしょ?」

「てか、ボクのデザインしたジュエリーを、ユウカちゃんに絶対に見てもらいたくて…。」

ヒロ君の少し茶味がかった目が、私を射貫いた。

これって何だろう…。

アナタが欲しい

私達は展示会のあるホテルへと移動した。

展示会場には他にお客は居なかったが、やけに賑やかなBGMが鳴り響いていた。

スタッフは他にも居たが、出たり入ったりだ。

ビジネスホテルの小宴会場?のような部屋。

建物の周囲は居酒屋・パチンコ店やら、その他風俗の歓楽街だ。

展示会場の窓からラブホテルの看板がよく見えるので、ドキッとする。

ヒロ君ら展示会スタッフは、皆このホテルに宿泊してるそうだ。

「あとで部屋に遊びに来ない?」とヒロ君はイタズラっぽく笑う。

私は会場の奥まった仕切りコーナーに案内された。

今回のイチ推しジュエリー、ヒロ君のデビュー作品のコーナーだ。

「きれい…。」

宝石のことは正直よく分からないけど、

彼が心を込めてデザインした宝石は、とにかく眩しかった。

「誰が買ってくれるのか、すっごく楽しみなんだ…。」

シンプルなデザインの、気品溢れるダイヤの指輪。

「ちょっと、着けてごらん。」

と私の左手薬指に嵌めてくれた。

世界にたった一つしかないオンリーワン。

「ユウカちゃんにボクのデビュー作品を、いつでも身につけて欲しい…」

ヒロ君は軽くウィンクしてきた。

こんなベタな振舞いがサマになるなんて…凄い。

私は陥落した。

私…買っちゃう!?

指輪本体に小さな値札タグが付いてるので、横目でチラっと見た。

想像より高い。即決できる金額ではない。

会場は賑やかすぎるBGMが、これでもかと響く。

私は御礼を言って指輪を外した。

そしたら、ヒロ君の上司?の男性が現れて、ローン契約を勧めてきた。

この上司もなかなかカッコいい。

「皆さん、独身の内に一生モノのジュエリーを買われますよ。結婚してしまうと、高価な買い物は出来ませんからね。」

結婚とか…。

ヒロ君が軽く目配せをしてくる。

…どうしよう。本気にしちゃっていいのかな?

私、幸せになってもいいのかな?

購入するかどうか考えあぐねていたら、頭がボーっとしてきた。

BGMは相変わらず賑やかなままだ。

「ユウカちゃん、大丈夫?顔色悪いけど…。」

「うん…ちょっとぼーっとする。」

ヒロ君は、私の肩にそっと触れながら、耳打ちした。

「少し落ち着いた方がいいよ。ボクの部屋へ行こう。」

私は一瞬戸惑ったけど、素直に頷いた。


私が部屋に入ると、ヒロ君は備え付けのミニ冷蔵庫から、ミネラルウォーターを出して、私に勧めてくれた。

私は半分位飲んで、だいぶ落ち着く。

「ユウカちゃん…どうかな?ユウカちゃんが、ボクのお客様第1号になってくれたら、嬉しいけどなぁ…」

「ヒロ君のデザインは、本当に素敵だよ!私だって欲しい…でも。」

ヒロ君の目が、吸い込むように私を見る。

「何て言ったらイイんだろ?私…臆病なんだよね。宝石なんて買ったことないし。私なんかに似合うのかなって…。」

ヒロ君は部屋のクローゼットから、小振りなジュエリーボックスを出してきて、私の目の前で開けて見せた。

さっきのデビュー作と同じデザインの指輪を抜いて、私の目の前にかざす。

「…実はこれが本物のダイヤモンド。」

「えっ?本物!?じゃあ、この…さっき嵌めたのって…?」

「そういうこと!ただのイミテーション。盗難とか万が一の為に展示会の現場には、本物は置けないんだよね、ここだけの話。」

ヒロ君は私の右手を取って、本物を嵌めてくれた。

そして、左手にさっきのタグの付いたイミテーションを、もう一度嵌めてくれた。

両手にダイヤモンド。

「どう?見比べてごらん。」

私は両手をヒロ君にかざしてみた。

「似合うかな?」

「ユウカ」

ヒロ君は不意に私の手を引き寄せて、耳元で囁いた。

「ボクと付合ってほしい。」

彼はこわれものを扱う様に、私を抱きしめてくれた。

ええ?

えっっ!?

私はぼーっとした頭がさらにぼーっとして、力が抜けていった。

ダイヤモンドは永遠の輝き?

「…ユウカ、大丈夫?」

いつのまにか、うたた寝してたようだ。

「うん…。ぼーっとする。」

椅子にもたれてたので、首が痛い。

それから、ダイヤ購入の話になった。

高い買い物だったが迷いはなかった。

私はヒロ君の恋人になったんだから…。

今日は日曜なので、明日銀行に行って振り込むことにした。

結構な金額だが、問題はない。

私の父親が事故死した時に、相続した遺産がかなりある。

そこから使わせてもらおう。

あまり好きな父親じゃなかったので、思い出すことは殆どない。

阿漕な商売をして儲けた分、色んな人から憎まれたらしい。

母親はそんな家庭生活を嫌って、私が小さい頃に家を出た。

そんな両親から生まれた私が、幸せになってもいいのか?と思う。

しかも遺産のお金で。

私の幸せのため。そのくらい、いいよね…。

「ユウカ、今左手に嵌めてる、イミテーションの方は戻してもらえるかな?右手のダイヤは、今日そのまま着けて帰って。」

私は両手の指輪に視線を落とした。

「あ、一応、両方戻すね。まだお金払ってないし。」

「ボクの彼女なんだから、気を遣わないで。」

彼は私の指を優しく撫でながら、イミテーションを外す。

「今日はもう東京に帰っちゃうんだよね?」

私が拗ねたフリでそっぽを向いたら、ヒロ君は後ろからそっと肩を抱いてくれた。


「おっかしいなぁ?…既読付かない…。」

あの展示会から約一ヶ月後。

ヒロ君らはあのあと東京に戻ってしまった。

私、もしかして…取り返しのつかないことを、しちゃったんじゃないだろうか?

ため息ついて視線を右手に落とす。

指には、煌々と光るダイヤモンド…。

あの時購入したダイヤモンドだ。

ヒロ君は東京に戻ってから、相当に忙しいのか、LINEの頻度は減ってしまった。

でも、既読が付かないのは初めてだった。

具合でも悪いのかな?電話をしようかどうか…。

スマホの画面を開けたり閉じたりしていたら、ふと、ネットニュースに目が止まった。

デート商法で荒稼ぎしていた、ジュエリー会社社長と幹部を逮捕 

記事の写真にはどこかで見たような顔の男性。

え?この顔?

ヒロ君と一緒に居た上司の男性?

…デート…商法!?


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