ブログ de ラノベ ~ 恋するイミテーション【中編】 イケ男にフラれて未来改変した話~

ブログ・ラノベ

ラノベ書きました☆前編は www.mineko1968.com/koisuru_imi_1/

前回のあらすじ:地方住みの平凡なOL・ユウカは、ひょんな成り行きで、都会のイケメン営業マン・ヒロ君とメル友になり、たちまち彼に夢中になってしまう。

ある日、ユウカの地元でヒロ君が勤務するジュエリー会社の展示会が開催され、誘われるまま高額のダイヤを購入してしまう。

その後、ヒロ君と音信不通になるユウカは、彼の会社がデート商法で摘発されるニュースを聞き、動揺するが…。

っていうベタなストーリーw。今回は中編です。デート商法は怖いですね…。

あ。私、ダイヤは買ったことないです。そんな高いもの買えませんし!

せいぜい英語教材24回ローンくらいですよ!

それ位フツーですよ…ね?ね?…ね…(;´∀`)

主な登場人物

ユウカ(黒岩優花) : 地方住みの平凡な会社員。複雑な家庭で育つ。男性とのお付合い経験ほぼナシ。

ヒロ君(広海黎也ヒロミ レイヤ) : 東京在住。ジュエリー会社勤務の営業マン。イケメンだがデート商法に関わっている。

ユウカ両親 : 父・黒岩氏。経営する会社の作業現場で事故死する。口とガラと洋服センスが⤵⤵⤵。母はユウカ幼少時に生き別れ。

電話の女 : デート商法の被害者。ヒロ君の元顧客で元カノ。

カラオケBOX管理人 : 来店者の世話役案内人。ユウカ父と仲良し?

疑惑の女たち

ヒロ君のLINEは未読のままだ。全く、つながらない。

音声通話もつながらない。どうして???

契約書に記載されている会社の電話も繋がらない。

例のホテルにも問い合わせてみたが、個人情報云々で教えてもらえなかった。

八方塞がりだ。

ん?そうだ!あの電話番号…。

私はイチかバチかで、ある番号に掛けてみた。

着信音が鳴る。でも出る様子はない。

諦めて切ろうと思ったら、「はい?」と女性の声。

「あのぉ…あの…ええと…」言葉が詰まる

「…誰ですか?いたずら?切りますよ!」

「待って下さい!!!」

自分でもびっくりするほど大きな声が出た。


あれから、数日後、日曜日の朝。

私はあのショッピングモールに居た。

なんでだろう。

平和そうなカップルや親子連れ。

私とは別世界だ。

私とは…。


あの番号に掛けて、出た女性と長い長い話をした。

ヒロ君が “ 削除してほしい ” と言った、あの番号だ。

勿論削除したが、自分の番号と下二桁が逆だったので、覚えていたのだ。

その女性とは。

私と同じヒロ君のジュエリー購入者だったらしい。

先月の初め頃、女性の地元の展示会で指輪を購入した途端に、音信不通になったとの事。

先月?私とほぼ同じ頃。

「私もそうなんですけど、何か知りませんか?」

と聞くと、彼女もこっちが知りたい位だ!と怒っている。

「あなたも引っかかったみたいね。今、ニュースで大騒ぎだもんね。

ショートメールを無作為に送信して、女の子が反応したら甘い言葉で釣って、宝石を売りつけるわけよ!

あなたもそうだったんでしょう?レイヤに付き合おうとか言われたんでしょ?

もう諦めたほうがいいわよ。返品したくても、レイヤにも会社にも電話が繋がらないし!」

そうなのだ…。

返品して返金してもらいたくても、会社自体があの状態では…。

指輪の代金は、あの翌日、銀行振込で送金してしまった。

7桁の金額…。

全額戻るのは難しいだろう。

さらに追い打ちをかけるように、彼女は言う。

「あなたの買ったダイヤモンド、ちゃんと調べた方がいいわよ?私なんかさ、イミテーション売りつけられたんだから!!!」

何が何だか分からなくなった。

疑惑の男たち

ショッピングモール内にリサイクルショップがある。

宝石・貴金属取扱いもしているらしい。

とりあえず行ってみることにした。

結果は…

結果は予想したくなかった偽物。完全なイミテーションだった。

…騙されたんだ。

彼は最初から本物を渡す気はなかったんだ。

私のあまりの落胆ぶりに担当者が

「イミテーションでもデザインは良いから、相場よりお得に買取れますよ?」

と言われたが断った。

もう、どうでも良くなった。

男の人って…?みんな、そうなの?

今まで、告白されて断ったことはあっても、自分から好きになることなんて、なかった私。

ヒロ君、大好きだったのに…

ヒロ君、どうして…?

もう、嫌だ。嫌。もう何も悩みたくない。

私はふらふらと屋上を目指した。


「ユウカ」

ん…

んんん…

「ユウカ、起きろ」

ん…。私…。寝てた?

「ユウカっ!」

目を開けると、誰かの顔が覆いかぶさるようにあった。

えっ?

えーーーーーーっ?

「…お父さん!」死んだはずの父親の顔だ。

え?そっくりさん…だろうか?

「ワシの顔を忘れたんか?」

理解が追い付かない。どうして?

「お前な…バカなことを…」

「私?」

「お前…死んだんだ」


あまりのショックで気を失った?が、また目を覚ますと、だいぶ理解出来てくるようになった。

そうだ…。あの日、私は…。

ショッピングモールの屋上の手すりまでは、記憶があるけど、その後は…。

まさか、こんな所で死んだ父親に会おうとは。

こんな所?いわゆる死後の世界?

…にしては妙に生活感あるような…。

そうだ!カラオケボックスの部屋そのままじゃん!と思った。

マイクも機材もメニュー表もある。壁にはインターフォンまで付いている。アレ、使えるのかな?

部屋をジロジロくまなく見てたら、ドアが開いて、小太りなオジサンが入って来る。

白い着物、メガネかけてて、きれいな禿げ頭。分厚いファイルをめくりながら、私を見た。

「黒岩 優花さん、ようこそ。お迎えまで、こちらの部屋で待機してて下さい。」

私はきょとんとしたまま、彼を見た。

「あ。自分はここの管理人です。お迎え待ちの方々をここでお世話しています。」

「お迎え…?」

「はい。ここは亡くなられたあとの、あの世往きまでの繋ぎです。結構混雑しますから、今しばらくお待ち下さいね。」

管理人を名乗る男は事務的に告げた。

「ちょと、待て」

父親は遮るように管理人に詰め寄る。

「あ。黒岩さん、ここでしたか?あまり他の部屋に行かないで下さいよ?」

「この子はワシの娘だ。」

「そうでしたね…ですけど全然似てなくておキレイですな。」

「なんか、文句あるんか?」

「いーえ、別に。」

なんて会話をしてるので、とても死後の世界とは思えない。

父親もガラの悪さは勿論そのまま、全く変わってないので驚いた。

「ユウカはどうなるんや?」

「はい、勿論あの世に行って頂きますが…ただですな、娘さん…その…ご自分の意志で、こちらへ来られたので、かなり時間がかかるかと…。」

「どんぐらいや?」

「私にはわかりません。

ただ、普通の方の倍以上はかかるかと…」

「どーにかしろ!管理人の仕事しろ!仕事出来んヤツは何処にでもおるんやな!ドアホ!」

「それは、私の管轄外…」

「ほーお?その分厚いファイルのどっかのページに、修整テープ貼ってワシの名前を書き足したのは、どーなんや?誰の仕業や?」

「それは…」

「バラされたくなかったら、ユウカを送り返せ!」

「…確認してみます」

管理人は渋々した顔で部屋から出ていった。

「お父さん、何の話?修正とか、書き足したとか…?」

「まあええ。どっちにしろワシは、長生きは出来んかったと思う。まあええわ。」

父は経営する建設会社の、作業現場の事故で死んだのだった。

「でもな、ユウカ。お前は違うじゃろ?死ぬにはまだ早い…」

「お父さん…私…」

私は子供みたいにワンワン泣いていた。父はヨシヨシと頭を撫でてくれている。

ガラが悪くて性格も最悪な父親だったが、こうして向き合うと、嫌いにはなれなかった。

「ユウカ、何も心配せんでええからな。ワシは、あの管理人のオヤジの弱みを握っとるけぇ、何とでもなる。お前は死なせん。

だけどな!あの男には痛い目にあってもらう!」

私はしゃくり上げながら、センス最悪なスーツ姿の父親を見た。

お父さん…変わらなさすぎw。

帰るコールは永遠に…

再び管理人の男がファイルを持って戻ってきた。

「…という事で、ユウカさんには帰って頂くことになりましたので。あの!これ、絶対に内緒ですからね!

改ざんはハンザイなんですよ!私は知らないことになってるので、何卒…。」

「何ゴチャゴチャ言いよるんか?はよ、せーや!」

管理人は例の分厚いファイルをめくりながら言う。

「ユウカさん。帰ってしまわれたら、ここでの記憶は全部リセットされます。

とりあえず、貴女が亡くなった時刻の1時間前まで、なんとか巻き戻すことが出来たので、死亡は回避できるでしょう。」

「ほーお!改ざんプロフェッショナル!」

父はニヤニヤしながら、皮肉たっぷりに囃し立てた。

「あーゲフンゲフン…ですが、この案件は違法性が高く、公になったらタダじゃすみません。

「だから、ユウカさんには忘れてもらうんです。いいですね?」

「宜しくお願いします。何から何まで有難うございます。」

本当にあの日に戻れるのか半信半疑だったが、全て任せることにしよう。もう辛いのは嫌だ。

「それと、これはオプションですが…黒岩さんたってのご依頼なのですが、ユウカさんにも同意を頂けたらと…思います。」

「え?まだ何か?」

管理人は父をチラチラ見ながら続けた。

「詐欺野郎のことです。」私は息を呑んだ。

「あんな、女心を弄ぶクズ男は抹殺されるべきですが…

どういう運の強さなのか、ヤツは逮捕もされず何の病気もせず、90歳の天寿を全うする運命なんですな。

こんな運の強いヤツは見たことありません。」

「それはともかく。ユウカさんを戻す為には様々な代償が必要なんです。

ヤツの寿命をカットして、その代償費用の足しにしたかったのですが…」

「出来んかったんか?おい?」

父は野次を飛ばすが、管理人は物ともしない。

「言い訳ではないのですが…

ヤツは強力な庇護の下に生まれてきているので、私のキャリアでも太刀打ち不可でした。

でもですね、そこで諦めるのは私のプライドが許しません。

そこで!ユウカさん!ヤツには天罰が必要です!」

管理人の突飛な内容の提案に、私は呆れつつ完全同意した。

個人懇談会?

「それでは…もうしばらくここでお待ち下さい。

スタンバイが出来たら、インターフォンが鳴りますので。ユウカさん、貴女が取って下さい。」

管理人は事務的に告げ、部屋からそそくさと退室し、私と父が残される。

二人でカラオケルームのソファーセットに並んで座った。

「…お父さん、死んでからずっとここに?」

「まあな。ワシはなかなか迎えが来んのじゃ。暇つぶしに管理人のオヤジをからかうのも面白いしなw」

なんだかんだで、仲良しらしい。

「お父さん。もしかして…お母さんと…お母さんに会えるまで…待ってるの?」

「…なんのことや」

「私、本当は知ってるんだよ。お母さん、家出した時、男の人と一緒だったのを…。」

「ワシは何も知らん」

父は今で言うところの、ブラック企業の経営者だった。

母はその家族ということで、誹謗中傷が絶えなかったらしい。私も地元では、イジメられ孤立していた。

だから父のことが大嫌いだった。亡くなった時も正直悲しくはなかった。

私は遺産の幾つかを受け継ぎ、会社の経営は親戚に任せて、ブラック企業と縁切り出来たので、ホッとした。

そして、49日も終わる頃。

遺品を整理していたら、引き出しの奥から母の手紙が束になって出てきた。

その時初めて、母が家を出た経緯を知った。

母の手紙は謝罪が殆どだった。

駆け落ちの罪。家族を裏切った罪。

ごめんなさい。ごめんなさい。一目でいいから、娘に会いたい。

後悔しかない。私はどうかしていた。戻れるなら戻りたい。

許して下さい。許して下さい。

そういった内容ばかりだった。

私は母の記憶がほぼ皆無なので、会いたいとか、特に思わなかった。

ドラマとは違うんだなーって。

ただ、確かなことは一つ。

父は母のことを本当に愛してたようだ。

だから許せなかったんだろう。

あんな、ブラック社長で、ガラもセンスも最悪の父親でも、人を純粋に愛する心は持っていたようだ。

ヒロ君なんか足許にも及ばない。

ヒロ君は…

所詮はイミテーションだったんだ…。

そんなイミテーションに恋した私。

傷付いて、悲しみにくれるだけでは、何も進まない。そこに留まったままではいけないんだ。

父は柔らかい眼差しで、私に伝えた。

「ユウカ…生き延びろ。勝ち組になっても、自分から死んだらそれまでや。

どんな手を使ってでも、お前は最期まで生き延びんにゃイカン。

しんどい事、辛い事、悲しい事。最後にはチャラになるから、人生捨てたもんやないぞ。それまで待て。」

紛い物ではない、本物の何かを掴める日が、本当に来るかどうかは分からない。

それでも。

生きていればこそ、だ。

「そうだね…生きて生きて、生き延びたら…私…お父さんみたいな人を見つけるよ!」

「あ。でも…ガラとセンス最悪なのは無理無理!」

「なんじゃとぉぉ???」

さっき撫でてくれた手で、私の頭をぐしゃーっと揉んだ。

そして。

インターフォンが鳴ったので、私がこわごわ受話器を取ると、ニヤリと笑う父の顔が徐々に霞んでいった。


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